好きだった人

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「ん?」 ふと制服に手を触れた時、なにかがポケットに入っている感触があった。 「なんか入れたままにしてたっけ?」 ポケットの中に手を入れて、その〝なにか〟に触れる。 「チュッパチャプス……?」 入っていたのは高校時代、あたしがいつも食べていたチュッパチャプス。 「あれ?卒業式には持ってってないはず……」 最近じゃこれもすっかり食べなくなったな。 これを食べてるあたしをみて〝俺も食べたいな〟って言ってきたのが大河だったから。 そこから仲良くなったから、毎日食べていたんだ。 『寧々と言えばこれだよな』 よく言っていた。 こんなとこまで大河との思い出に溢れてる。 あたしの高校時代は本当に大河ばかりだった。 一緒にいた大河もそのはずだったのに、どうして気持ちだけは違ってしまったのだろうか。 「食べよう……」 チュッパチャプスの袋をとって飴を舐める。 口の中に高校時代のあの味が広がって、それだけで涙が出る。
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