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坂道を歩いて行くと、年季が入ったグレー色の縦に長細い建物が見えて来る。三階建てのマンションだ。
ここが僕の住まいのマンションで、二階が僕の部屋だ。よくありがちな1kの一人暮らし用の部屋で、三畳程のキッチンに六畳程のフローリングの部屋だ。ミニテーブルが一台。隅にはシングルベッド。
青い寝具と水色のカーテン。特に何も置くものもないので、部屋はいつもきれいに片付いていた。
そんな僕の住まいのマンションのすぐ向かいに、新しいマンションが建ったのは、ごく最近の事だ。ボロい僕の住まいのマンションとは違い、ベージュ色の、サイコロが長くなったような、五階建てのマンションだった。入居者はまだまばらのようだが、立地も良いし外観が綺麗なので、直ぐに埋まるだろう。
そのマンションの一階の貸店舗に『チーズケーキ屋』が出来た。大きなウィンドウが、今っぽい。白い店内が僕の部屋の窓からも少し見える。
開店して一週間は客足が絶えなかった。僕も行きたいと思ったが、行列を並ぶのは好きではない。客足が落ち着いた頃、行こうと決していた。
毎日自分の部屋からその店の様子を見るのが日課になっていた。その際、自分の部屋の窓ガラスに自分の容姿も写る。
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