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今年度から俺が配属された克山警察署は、県警本部のある中心部の隣の市にあるものの、周りは山に囲まれ、去年まで俺がいた本部や、大規模署とはほぼ遠い小規模署になる。
都会の喧騒など関係ない静かな町だ。
定年間際のベテランなら、ここでゆっくりしても良いだろうが、まだ28歳で、去年まで第一線にいた俺にとっては苦痛以外のなんでもなかったーー実際に勤務するまではーー
大規模署の生活安全課捜査係に属し、数年の経験後、去年は本部生活安全部生活環境課特捜係で、様々な事件に立ち向かって行った。
花形の刑事部刑事に比べれば、劣るかもしれないが、俺は生活安全部の刑事として誇りを持っていた。
それが何故、今年度の異動で、小規模署に異動してしまったのか。
別に何か失敗等をした訳ではなく、それなりに理由はあるのだがーー正直左遷レベルだ。
同期や同僚は皆心配してくれたが、異動の理由は答えることができなかった。
何も知らなかった当初は、左遷だと周りから言われ、自分も不本意ながら納得していたが、後日、克山署長直々に説明を受けた時は、説明の内容に、驚き半分疑い半分だった。
あまりの荒唐無稽な内容に、俺は苦笑したが、その後、説明通りの状況に陥り、頭が真っ白になったのが、異動初日のことだ。
まさか、交番横の古い図書館にあんなものがあるとは、今でも信じられない。
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