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気むずかしそうな外見とは打って変わり、ほづみがデザインする大人可愛いジュエリーは、カジュアルでもフォーマルでも使いやすいと人気が高い。
「あの、悪魔め」
唇を噛みしめ、ほづみはガンガン机を叩いた。
「駄々をこねる子供みたいな、幼稚な八つ当たりは止めてくださいよ。ほづみさん、もう四十なんでしょ?」
甘いミルクとキャラメルの匂い。珈琲はブラックと決め込んでいるほづみには、悪魔の飲み物としか思えないキャラメルマキアートの香りを引き連れ、オフィスに背の高い男が入ってきた。
春先に、氷室が見つけてきた、マーチャンダイザーの新見遼だ。
齡、三十五。まさに男盛りの遼は、モデル顔負けのイケメン面でほづみをだいぶ高い位置から見下ろしてくる。
「四十だろうと、五十、六十だろうと、腹が立ったら机を叩くもんなんだ」
「なんですか、へりくつですか? まあ、なんだっていいんですけども。早く、僕が納得できる新製品を出してくださいよ。ほづみさんは、《sparkle》の、人気デザイナーなんですよね? さくさく頑張って貰わないと、僕に仕事が回ってこないんですよ」
にやにや笑いながら珈琲カップを傾ける遼に、ほづみは「わかっている」と中指を立てた。
「新見。何度も言ってるだろう? 名前で呼ぶな」
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