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ゾクゾクと痺れる背中は、きっと、気味が悪いからだ。ほづみは気にしていない素振りを装い、モニターへと視線を向けた。
「この曲線、最高にエロティックですよ。ぞくぞくしますねぇ。この指輪に合わせる宝石は、やっぱりダイヤかな。《Virgin》、結婚指輪として展開するのも悪くないなぁ」
無遠慮に耳へと入ってくる熱を帯びた低い声は、どうしても、夢での情事を思い起こさせる。
(わざとやっているのか、こいつ!)
腹に肘鉄を食らわせたいのをぐっと押さえ、ほづみは作業を続けた。
「どうしたんです? 昨日と全然違うじゃないですか」
「気のせいだ」
「誤魔化せると思ってます? ずっと、誰よりもほづみさんの作品を見てきた僕が、感づかないわけないでしょ」
「嘘をつけ」
「嘘なんかじゃ、ないですよ」
遼は両手をほづみの肩に置き、続ける。
「僕ね、ほづみさんと仕事がしたくて《ダム・ブランシェ》の内定を蹴って《sparkle》にきたんですよ」
「ば、馬鹿なのか、お前!」
《ダム・ブランシェ》は《sparkle》がひっくり返っても敵わない、国内外でも有名な大手ジュエリーブランドだ。
「ひどいなぁ。馬鹿にするよりも、褒めてくださいよ。《ダム・ブランシェ》よりも、僕は、ほづみさんを評価しているんです。貴方を選んだんですよ」
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