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 ほづみは、罵声をぐっと飲み込んだ。  超大手メーカーと天秤に掛けられて、嬉しくないわけが、ない。 「素直に喜んでくださいよ。色男が不細工になって、目も当てられません」 「……うるさいな」  見られたくなくて、ほづみは左手で顔を覆った。 「これ、とても良いですよ。デザインがまとまったら、早速試作品を作りましょう。いける気がする」  ぽんぽん、と肩を叩いて遼はふたたびソファーに戻り、スマホを駆使して関係各所に連絡を入れ始めた。  いつも暑苦しいほど感情のこもった声だが、さらに熱を込めて語る遼の声にどきっと跳ねる胸を撫で、ほづみはコーヒーを口に含んだ。  悪戯されるかと身構えていた肩から力を抜いて、本格的に作業に戻る。  停滞していた企画が、一気に動き出していくのを感じていた。
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