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ほづみのデザインを元に作成された指輪は、結婚指輪として売り出されることになった。
「天木志保里さん、入ります」
撮影スタッフの声と共に拍手が鳴り、マネージャーを引き連れてウェディングドレス姿の女性がスタジオに入ってきた。
透けるような白い肌に、長い黒髪。
年若い女性の瑞々しさこそないが、天木志保里は甘く匂い立つような色香を持った女だった。
「実際に目にするのは初めてですが、とても綺麗な人ですね。不思議と、年齢を感じさせません」
撮影スタッフと軽い挨拶を交わし、早速、撮影に入る志保里を褒めちぎる遼に、ほづみは鼻を高くして上機嫌で腕を組んだ。
綺麗なのは当たり前だ。自分が惚れた女なのだから。
ほづみは、志保里の指に嵌まる新作ジュエリーの出来映えにも満足していた。デザインはもちろん、使われているダイヤモンドも素晴らしい。
「苦労して、デザインをひねり出した甲斐があったな。《Virgin》の婚約指輪。あれは、売れる」
「売れて貰わないと困りますよ。あのレベルのダイヤ、確保するのたいへんだったんですから」
ライトの光を弾くダイヤモンドの気高い輝きは、志保里の美しさをさらにランクアップさせていた。
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