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 冗談めいた口調だが、向けられる視線は夢でほづみを抱いたときのようにぎらぎらと光っていた。 「……なにをしろって言うんだ」 「身構える必要はありませんよ。指輪を嵌めて、僕とキスしてください」 「馬鹿だろ、お前」 「高校生みたいなお願いですよ? 可愛いって言って欲しいなぁ」  やるのか、やらないのか。  視線で促してくる遼に、ほづみは渋々小指を差し出した。  キスで穏便にすむのなら……と考えて、ほづみは「待て!」と首を振った。穏便に済むわけがない。はじめから、舌を入れてきた相手だ。 「待ちませんよ」  にやっと笑う遼に、ほづみは顎を捉えられ、為す術もなく受け入れるしかなかった。 「あっ、……ふぅ」 ぴったりと体を密着させてくる遼を引き剥がそうと背中に回した手は、苦しさから、縋るように質の良いスーツをキツく掴んでいた。 「んっ、ん――」  ほづみの反応を楽しんでいるのか、遼の目が笑っていた。 「すごいな、キスだけでいっちゃうんじゃあないですか?」 「ひ、ひかな……ひっ」 「我慢してくださいよ、ほづみさん。じゃないと、替えの下着を買ってこなくちゃいけなくなりますからね」  うるさい。  馬鹿野郎。  吐き出したい罵声の全てを奪われ、ほづみは遼にしがみついた。     
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