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店長まで巻き込んで、バイト先にただれた欲望を撒き散らそうとする日置のケツに廻し蹴りを見舞った。
「オレは別にフランケンでいいし」
本音を言えば、フランケンの被り物はかなり恥ずかしかったけど、知り合いの前で低クオリティな女装を見せるよりはマシだろう。
「本当に?着たいのとかない?」
「そりゃ……もうちょっと……海賊とか」
「ああ、いいね、肩出しで編み上げベストがセクシーだ」
日置が手に取ったのは、茶のベストにふんわり白シャツが一体になった赤いスカートの女海賊ドレスだった。
不機嫌になったオレに気づかない日置を見かねた国分くんが、さっとポリス衣装を手に取った。
「これいいんじゃない?」
「ああ、いいね。うん、オレこれがいい」
「おおそうか、んじゃ、伊良部くんコレ着てくれる?」
「けどラブちゃん……せっかく……」
さらに文句を言おうとする日置を国分くんがニコニコと遮る。
「ほら、手錠も可愛いし。日置あとで伊良部くんに逮捕してもらえば?」
「お……おおう……さすが……国分くん」
日置は最近なぜかわからないけど国分くんをリスペクトしているらしい。
オレがささやかな愚痴を国分くんに言うと、いつの間にか日置に伝わって改善したりすることもあった。
オレが言ってもイマイチ伝わらないのに、国分くんを介すると通じるのはなぜなのか……本当に不思議だ。
ヴァンパイア衣装に着替えた日置はいつもと違い前髪をさっと撫でつけクールな印象だった。
けど、マントが長いせいで、テーブルを増設し間隔が狭くなったころでの配膳には邪魔になる。
なので、ゲームイベントなどの手伝いを中心に動くことになった。
そもそもイベント進行するはずだった店長は段取りが全くおぼつかず、結局副店長にバトンタッチして、さらに日置のサポートが加わり、やっとゲーム進行が盛り上がり始めた。
少し照明を暗めに設定した店内で、クールなヴァンパイアの日置が一人ライトを浴びてじゃんけん大会。そしてビンゴを仕切る副店長の横で客ににこやかに賞品を手渡したり……。
チッ……店のオープン前は店長とすら会話の成立しないアホ日置だったくせに、今はただのイケメンじゃねぇか。
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