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結局、日置にレジを任せたんだけど……。
日置はいつもと同じように立っているだけなはずなのに、居酒屋の作務衣風制服が、黒マントを羽織って白いブラウスにワインカラーのベストを着たヴァンパイア衣装に変わっただけで、なんだかレジが異空間になってしまった。
ここ……本当にうちの居酒屋だよな?
カボチャを被った国分くんが立ってる時はこんな空気じゃなかったのに。
帰りの女性グループがレジにやって来て合言葉を言う。
「トリック オア トリート?」
「ハッピーハロウィン」
無自覚なんだろうけど、どうにも気障ったらしい笑みを浮かべてお菓子を渡す日置。
「イエーイ!」
そしてなぜか女性のお客さん達が順番に日置にハイタッチ。
レジ担当が変わっただけで、こんなにノリが変わるのか。
はぁ……チャラくてムカつく。
「あ、伊良部くん、ちょっとイラっとしてる?ヤキモチ?ヤキモチ?」
またキラキラした目の国分くんに聞かれてしまった。
「国分くんはあの感じイラっとしない?」
「え……いや、僕は別にイラっとするって言ってもほんのちょっとだけだよ」
「ヤキモチ?」
「まさか!代わってもらって助かったし、ただなんかチャラいなって……」
「オレもヤキモチじゃなくてそっち」
「……そっか。やっぱなんか……うーん前途多難だなぁ……」
「え……なにそれ」
「いや、日置が最近ね…………」
◇
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