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恋するピカモン
放課後の誰もいない図書館。
窓から射し込む柔らかな西日が、橙色に館内を綺麗に染めている。
私は、夕暮れ時の、柔らかな本の匂いに包まれたこの景色が好きだ。
そして私は今まさにこれから、大好きな人に告白をしようとしている。
今、ここにいるのは私と彼の二人だけ。
本の匂いが染み付いている静かな空間で、私の心臓はまさに今、破裂寸前だった。
「あっ・・あの。突然呼び出してごめんね。」
うわ、ベタすぎる、自分。
これじゃあまるでこれから告白するから心して受け止めてね、と言っているようなものではないか。
けれども、緊張のあまり他に言葉が思い付かないのだから仕方ない。
そもそもここに一人で呼び出された時点で、向こうもある程度は予想しているだろう。
現実とは残念ながらそういうものだ。
「や。大丈夫。どーせ暇だし。話って何?」
緊張でガチガチになっている私とは対照的に、彼はどこまでも飄々としている。
片耳に小さな銀のピアスを着けており、その耳の中を私から視線を外してぽりぽりと掻いている。
彼のマイペースはここでも健在だ。
まあそこが魅力でもあるのだが。
いや、そんな事を考えている場合ではない。言うのだ。今、言うんだ。
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