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さっき名前の出た奴らは地元を出ずに就職している。もしかしたら、親を通じて帰ってきていることは知っていて、事情が事情なだけに、そっとしているのかもしれない。
「これは俺の連絡先。IDで検索しても大丈夫なようにしておくから、登録してね。」
その辺にあった紙に、携帯番号とメールアドレス、ラインのIDを書いて渡してきた。全ての情報を揃えてきた夏緒に少し驚いた。
「あと、つぶやいたーのアカウントいる?」
「俺、つぶやいたーやってねえからいらない。」
「顔のやつは?」
「それもやってない。」
「そうゆうとこは変わってないね。興味ないものには全く気にもしないとこ。一応書いておくから暇になったら見てみて。」
「見ないからいらないし。」
「いいから。俺が教えたいの。」
落としたら大ごとになりそうな個人情報満載のメモを夏緒から渋々受け取った。
それから、荷物を持って戻ってきた朔弥と共に、小学校を後にした。
「雪兄、なんだか楽しそう。夏緒先生といっぱいお話ししたみたいだね。雪兄と夏緒先生は『あくゆう』なんでしょ。どんな意味なの?」
帰りの車内で、左足をダッシュボードに上げ朔弥が聞いてきた。行儀が悪いが、痛いものは仕方がない。
「あくゆうはな、年が経っても子供の頃にすぐ戻れる友達のことを言うんだ。」
俺の話にへーとか、ふーんとか言いながら朔弥は興味津々に聞いていた。家族以外と話すのは本当に久しぶりで、気分が昂ぶっていた。過呼吸も忘れて、話に夢中だった。
夏緒との再会が俺の中で良い流れに思えてきて、あの頃のわくわくが戻ってきた気がしたのである。
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