夏が嫌いな理由

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身体と心が離れたようになり、息をするのにもしんどくなった。駄目な自分が情けなくて涙が出て、毎日死にたいとすら思った。 直ぐに支給された失業給付も底をついて無くなり、屍のような暮らしの俺を、見るに見かねた両親と姉が回収しに来た。 それが先月の半ば。丁度梅雨に入った頃で、夜にはカエルの合唱が辺り一面こだましていた。約3年で終わった俺の社会人生活は、俺の心にぽっかりと空洞を残して去って行った。今俺のいる現状はあまりにも情けない。ネット環境も不安定な片田舎で、ただ夏が過ぎるのをゴロゴロと待っていた。 嫌いな夏が終わったら再び動き出そう。そう心に決めていた。 7月下旬、とても暑い夏の昼下がりだった。
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