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まだ声変わりする前、2011年4月に開催されたジャナドリア祭。この年は日本がゲストとして招かれた。
日本館には長蛇の列ができ、舞い散る桜、異国の演舞が脳裏に焼き付いている。
「復興、するといいな」
ファドゥルがつぶやいた。
2011年3月11日。大きな地震と、津波が日本を襲ったのだ。
インターネットで動画を見て、背筋が凍った。巨大な濁流が、車を木の葉のように弄び、ビルや家屋を見る見る飲み込んでゆく。
津波の速度はラクダの全力疾走よりも速い。
異教徒とは言え、同じ人間だ。
その日は中々寝付けず、「東方の島国を襲った災害が一刻も早く立ち直りますように」と祈った。
「次のオリンピックが決まったから、大分復興したんじゃないかな?」
憶測にすぎないオレの言葉に、ファドゥルが無言でうなずいた。
「成人したら日本の大学に留学したいと考えているんだけど、やっぱりイスラム教って、評判悪いのかな?」
「さぁ。ネットを見る限りでは大丈夫みたいだけど」
イスラム教徒が皆、戦争を好むと思われるのは心外だ。
古くから伝わる童話には、王が3人の王子に「自分を鳥に例えると」という題を出す。
長男は「ハヤブサ」、次男は「大鷲」、三男は「スズメ」と答えた。
結末は、「スズメ」と答えた三男が争いを好まず、平和に国を治めた。
周りと争わず、民の目線で平和に過ごすことが大切だと、親から子へ、何度も伝えられているのだ。
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