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「今日は家に泊まる? ホテル代が浮くし、積る話もあるからさ」
「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうよ。でも、競技前に太らせようって魂胆じゃないだろうな?」
オレの言葉に、ファドゥルが「まさか」と首を振った。
ラクダの騎手は、競馬にも言えることだろうが、軽い方が断然有利だ。
必然的に、子供の騎手が増えてゆく。時速40キロを超えるレースに子供を使うのはどうかと、批判が高まった。
オレとファドゥルは16歳。
節制を重ね、かつ筋力を維持するのは中々大変だ。
ファドゥルの家で、温かいコーヒーと、ナツメヤシから作られたデーツをいただく。
ヨーグルトも美味しかったが、これはカロリーが高いのでお代わりは辞退した。
ファドゥルのご両親もラクダ騎手のことを良く知っているのだろう。無理に勧めることは無かった。
この時期、夜は涼しい。ちょうど20℃くらいで、乾燥していて寝心地が良い。
「ロボットレースがあっただろう?」
「ああ、確かあったな」
子供に代わり、ロボットが騎手を務めるレースが開催されたことを思い出す。
「漠然とした夢だけど、俺は将来、ああいう物を造りたい。工学で細かい部品を造り、プログラミングで調整をする技術は、日本が優れていると思うんだ」
確かにそうだな。と、左手に巻いたメイド・イン・ジャパンのクオーツ時計を眺めながら答えた。
「俺はレースで堂々と勝ち、賞金で日本に渡る」
「そうか。オレも本気だ。両親に楽をさせてやりたい」
「イスム」「ファドゥル」同時に名前を呼び合った。
「「手は抜かない。全力で勝負だ」」
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