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食事は、土鍋で炊いたふっくら栗ご飯。香の物は、白菜の浅漬け。
栗の味に秋を感じながら、貴和美はよく噛んだ。
白菜の厚い黄白色の部分をサクサク食べると、しょっぱさの中に一緒に漬け込まれた唐辛子の辛味が表れて、心地よい刺激を舌に与える。
珍しい野菜が続いた後のなじみの食材に、貴和美は少しホッとした。
デザートは、栗羊羹と抹茶。
羊羹の甘さと抹茶の苦さが、ちょうどよいバランスを保っている。
「この栗羊羹も、一楽さんが作っているんですか?」
「そうさ」
「どうやって、作るんですか?」
「小豆を水に浸けてふやかしたあと、粉にする。その小豆の粉と砂糖、水を混ぜて弱火で煮込んで小豆餡を作る。そこに溶かした寒天を混ぜ、煮ておいた栗を均等に並べて冷やせば、栗羊羹の出来上がり」
言葉で説明すると簡単にできそうだが、多分、作ってみれば手間暇が相当かかるだろう。
「餡子ぐらいは、買ってきているんだと思っていました。そこから作るって、大変じゃないですか?」
「作れるものは、自分で作りたいんだ。三糺で出すものは、すべての素材を把握しておきたいというのもあるし、好きな甘さに調整できて都合がいいから」
「ヒエー」
貴和美は、思わず悲鳴を上げた。
とことん、こだわる姿勢に舌を巻いた。
そして、なんでも作れて凄い。
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