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「天糺ちゃんに、そんな時があるなんて想像つかないけどモテそうね」
“ミーのことは構うな”
「でも、人間と猫は違うから」
“また、それだ。恋人同士なんだろ? 猫だって人間だって、愛していればそうなる。一楽を愛していないのか?”
「それは……」
貴和美は、返答に困った。
(愛していれば……)
貴和美は、想像してみた。
(一楽さんと……、イチャイチャ……)
変な想像をしてしまって、顔が熱くなった。
「やだ、もう! 天糺ちゃんが変なことを言うから!」
恥かしさを誤魔化すため、ずるいけど天糺のせいにする。
“もちろん、行くんだろ”
「どうしよう……。どうしたらいいの?」
“何も知らない振りで、誘いに乗ればいい”
「天糺ちゃんのせいで、何も知らない振りなんて、もうできないから!」
“聞かれたから、答えたまで”
「私、緊張しちゃって、変なことしそう。やっぱり、やめたい」
“断るのか?”
「まだ早いと思うの。それと、天糺ちゃんの言った通りになると決まったわけじゃない。全然、違うかもしれないじゃない?」
必死に目を背けようとする貴和美に、天糺は、心底呆れた。
“逃げ道を作りたいのなら、作ればいい”
「……」
天糺から見捨てられたセリフが出てきて、自覚した。
いくら隠しても、天糺には全部お見通し。
貴和美は、いつも逃げ道を探して生きてきた。
そんな自分を、嫌いになりそうだ。
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