508人が本棚に入れています
本棚に追加
キンと冷えた空気の中、マフラーを首に巻いた貴和美は三糺に向かっていた。
やや足早に歩いているうちに、喉の渇きを軽く感じた。
ここ数日間は晴れ続き。空気がよく乾燥している。
病院から外泊許可を得ることができた貴和美は、一楽と夕方に会うことになった。
待ち合わせ場所は、三糺。
そこから移動して、近くのお店で食事をとろうと言われている。
とりあえず、下手な手料理を披露しないですみそうだ。
貴和美は、それだけでも肩の荷が軽くなった。
だけど……。
―― 一楽と、一緒の夜を過ごす。
そのことを、軽く考えただけで緊張し、体はやや熱くなる。
三糺に近づいてきた。
呼吸を整えるため、一旦、足を止める。
冬空を見上げると、夕雲が過ぎっていく。
冬の日没は早い。間もなく暗くなるだろう。
その前に、つかなくては。
貴和美は、再び歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!