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三糺の前につくと、貴和美は天糺を探した。
いつもの場所にベンチが置かれていない。だから、天糺の姿もそこにない。
(お店が休みでベンチがなくて、いないのか……)
周囲を軽く探したが、見当たらない。
(見守ってくれるって、言っていたのになあ)
ちょっと、寂しくなる。
竹の門をくぐると、風糺、山糺が飛び出してきた。
「ニャー!」「ブニャー!」
「風糺ちゃん! 山糺ちゃん!」
風糺は、小さな頭を貴和美の足にこすりつけ、山糺は、貴和美の前でひっくり返って大きなお腹を見せる。
いつも通りの2匹。
2匹の頭とお腹を撫でているうちに、貴和美の緊張はすっかりほぐれた。
「風糺ちゃんと山糺ちゃんは、和ませる天才ね」
2匹に感謝する。
貴和美は、言葉が通じない風糺と山糺に聞いた。
「天糺ちゃんは、どこか知っている?」
どうせ答えは返ってこないと思っていたら、“ここにいるぞ”と、聞こえてきた。
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