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その声を聞いただけで、嬉しさで涙ぐんだ。
“ミーを見て、なぜ、泣く?”
「安心しちゃって……」
“緊張しすぎだろ”
「そうだけど……、自然とそうなっちゃうの」
“一楽は、朝からテンションが高い。一生懸命に髪を撫でつけておしゃれしている”
「えー! そうなの!? あの、一楽さんが?」
一楽が、自分のためにおしゃれをしている。
その姿を想像すると、貴和美の胸がくすぐったくなった。
「えー? えー? どうしよう!」
興奮する貴和美を、天糺は諫めた。
“落ち着け。一楽が、もうすぐ出てくるぞ”
「分かるの?」
“ミーが、貴和美の来たことを教えておいたからな”
「それは、ありがとう」
天糺は、よく気が回る本当に賢い猫だ。
一楽が、いつもの笑顔でやってきた。
「貴和美ちゃん。こんにちは。待ってたよ」
「一楽さん、こんにちは」
貴和美は、平静を装って挨拶した。
ところが、ついつい、一楽の頭に目がいってしまった。
天糺が言うことには、一生懸命にセットしたらしい髪型。
確かに、よく決まっている。
手拭いを頭に巻いている姿も男らしくて好きだけど、こちらも素敵だ。
服装は、チェスターコート、クルーネックニット、黒スキニーに革靴で、冬の装いを恰好良く決めている。
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