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「そろそろ、次に行きますか」
「今度は、どこですか?」
「鎌倉野菜の買い付けです」
『三糺』は、鎌倉野菜を使った小料理屋だ。新鮮で美味しい鎌倉野菜の仕入れが、一番重要な仕事に違いない。
3匹を後部荷台に乗せると、一楽は運転席に乗った。
貴和美は、反対側から助手席に乗る。
一楽は車を走らせた。
江の島を右手に見ながら、海岸線を走る。
片瀬海岸を出ると、すぐに由比ヶ浜の前となる。
「鶴岡八幡宮から、ここ、由比ヶ浜まで、参道がまっすぐ通じているんですよ」
「まっすぐなんですか? 結構距離がありますよね。一体、誰がそのように作ったんですか?」
「源頼朝。参道は産道に通じるということで、妻の政子の安産祈願に、曲がりくねった道をまっすぐにしたそうです」
「頼朝って、そんなに妻想いだったんですか」
ちょっと、うらやましい。
一楽は、車内から外を見て言った。
「すぐそこに、農協の鎌倉野菜直売所があるでしょ? 鎌倉野菜は、とても人気なんですよ」
通り沿いに、大きな農協の看板が見えてきた。『鎌倉野菜直売所』と書かれたのぼりがいくつも並んで見えて、観光客を誘っている。
「ありますね。あそこで買うんですか?」
「いえ。鎌倉野菜を栽培している同級生がいて、そいつに直接売ってもらうんです。だから、これからそこに行きます。今行けば、ちょうど朝の収穫が終わったころ。邪魔にならない時間に行かないと迷惑なので」
10分ほど走ったところで、一軒の家の前に到着した。
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