三章 寒空のした

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 満足はしていないが、人から言われるほど自分を不幸だと思えなかった。思いたくないだけなのかもしれないが。 「おびえる余裕もないほどに、素敵な出会いができるといいですね」 「……うん、そうだね」  どうしても、深く考えすぎてしまうのだ。  経験が、悲しい未来を予測して目の前に突きつけてくる。  すべてが同じように行くわけがないとわかっていても、ちらついて、無視ができない。 「奇跡を、信じられるぐらい強くあれたらいいのだけどね」  珈琲豆を紙袋に包んでもらい、ビーシュは店を出た。  そろそろ、レオンハルトと約束した時刻になる。
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