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ほっと息をつこうとして、ビーシュは肩をよせてくるレオンハルトに息をのんだ。
「それとも、もっと激しいほうがいいのかな?」
「だ、だめだよレオくん」
ビーシュは熱くなる頬を冷やすよう、首を緩く横に振った。
「ふふ、ごめんね。かわいいからつい、いじめたくなる。ビーシュが嫌なことは、僕もしたくない。だから、ビーシュがしたいことなら、何だってしてあげてもいいと……思っているのだけれど」
「でも、レオく――」
ちゅく、と。果実のソースに濡れた唇が触れた。「レオくん?」
ナイフとフォークをもったまま、驚きのあまりに硬直するビーシュを笑って、レオンハルトはパンケーキを切り分けてゆく。
「どうしてだろうね。僕自身、驚いているんだ。ちっとも、そうは見えないだろうけど。友達のままではいられない衝動を、もてあましてる」
周囲の目など全く意識していないレオンハルトは、ビーシュだけを視線にいれている。
貴族もよく訪れるこぎれいな区画の、空と風が気持ちの良いテラス席だ。誰かに見られていただろうに、動揺しているのはビーシュだけだった。
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