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ニルフは大きく頷いた。
「もしくは、レオンさん……いえ、レオンハルトのほうかもしれません。今日、彼の周りをうろつく怪しい男を見ました」
確信的な物言いのニルフに、ビーシュは眉根を寄せて、ずれた眼鏡の位置を直した。
(……ぼくのことか)
冤罪だと飛び出してゆきたいが、あいにく、衣服はエヴァンとニルフが対峙しているリビングにある。
「ロナード様は、メルビスの作品をお集めになっていらっしゃる。なにか、心当たりはございませんか? 怪盗めいた格好の盗人です。ご存じではありませんか?」
「さて、知らないね」
エヴァンの即答に、ニルフの顔が不満げにゆがんだ。
「すこし、落ち着きたまえ。姉君への思いはとても素晴らしいが、犯人を探る行動は、家長であるデニスの判断かな? あまり、ことを荒げないほうがいいように思えるが?」
乱暴に言ってしまえば、被害はティアラだけだ。損害を考えれば大きいとはいえない。
「これは、自分の独断での行動になります。お叱りは後々、必ず受けるつもりでおります」
「他家の騒動に、俺を巻き込まないでいただきたい。代わりのティアラの都合はつけられても、怪盗を捕まえる手助けはできないよ」
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