三章 寒空のした

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 するすると喉に消えてゆくワインのように流され、ニルフは激高に頬を赤くさせた。  貴族のニルフにとって、エヴァンは地方の富豪だ。頭を下げられても、下げる方ではない。 「バロウズ商人の居場所、ご存じではありませんか?」  爆発しそうな怒りをすんでの所で耐え、ニルフは押し殺した声で問う。 「知らない。が、取引の約束はしている。足を棒にしてもなかなか手に入れられないメルビスの作品をおどろくほどたくさん仕入れているようだ」 「ぜひ、同席させていただきたい」  エヴァンは首を振って、空になったグラスを乱暴に置いた。 「バロウズに、君が会いたがっていたと伝えておこう。それで、満足していただけないかな? 盗まれたのはティアラだけ、脅迫も無い。メルビス作に固執する理由がないのなら、すっぱり忘れてもっと価値のあるティアラで飾って差し上げればいい」  すっと立ち上がったエヴァンは、無言のままドアを開けた。 「……言付け、必ずお願いいたします」  出て行けと促され、食いつこうと口を開くニルフだったが、エヴァンの迫力に負け、すごすごと部屋を出て行った。  靴音が消えてから一拍おいて、エヴァンが寝室に入ってきた。 「待たせてしまったね」     
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