四章 甘く包まれる

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 真っ白の砂糖を溶かしたくなる飲み物は、どことなくビーシュに似ているのかもしれない。 「そう、レオン。あなた恋をしているのね」  予想もしてなかったエリスの言葉に、レオンハルトは紅茶を吹き出していた。 「あらあら、いい男も紅茶まみれじゃ台無しね」  エリスはカップを片手に、別の手にはベッドから引っ張りはがしたシーツを持ってレオンハルトに歩み寄る。 「シルクのシーツで顔を拭かれるなんて、贅沢だね」 「ご自分で拭いてくださる? もう、立派な大人でしょう」  ばさっと、頭からシーツを被される。もったいないと思いつつ、紅茶に濡れた顔をぬぐった。 「恋……か、そんな指摘されるとは思ってもみなかったよ」  椅子に座ったエリスは、レオンハルトのカップに紅茶を注ぎ、「わたしもよ」と肩をすくめた。 「あなた、人を愛せない人なんじゃないかって心配してたけど、私の杞憂だったのね。だいぶ安心したわ。まあ、レオンに好かれてしまったその人は、かわいそうな気にもなるけど」 「僕の友達らしい言いようだね。まあ、否定はしないけど。付き合った人たちは、いつもひどい別れかたをしたからね」  紅茶の染みがついたシーツをたたみながら、レオンハルトはすがるように見つめてくるビーシュの目を思い出す。     
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