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アメジストの眼球で見つめられると、どうしても目が離せなくなる。
本能的に手を伸ばして、抱きしめたくなる。この感情をなんと呼べば良いのか、レオンハルトはわからなかったが。
「どうしてだろうね。忘れられないんだ、彼のことが。明日はどうやって会おうか、その次はどうしようか。ずっと考えてる」
一回りほど離れた男を、かわいいと思う感覚はたぶん、どこか狂っているのだろう。
「初めてなんだ、エリス。こんなにも、誰かのことを考えているのは」
語ってから、レオンハルトは肩をすくめた。
「婚約者にするような話じゃなかったね」
「かまわないわ。私たちは友達同士で、それ以上でも以下でもない。だって、考えてみて。あなたと子供を作る私なんて、想像できないわ」
「たしかに」そう答えると、エリスは声を上げて笑った。
「ねえ、もっと聞かせて。レオンの心をわしづかみにしている彼のこと。まずは、名前から。さすがに、名前ぐらいはあなたでも訊けるわよね?」
「さすがに、僕だって名前くらいは訊けるよ」
すでに深く繋がってしまったと言えば、エリスはどんな顔をするだろう。想像するとおかしくなってきて、レオンハルトはつい口元を緩めてしまう。
「なあに、惚気話かしら?」
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