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静かすぎてゆっくりと時間が流れてゆく工房に、一定のリズムを刻む音が響いている。
引き留めるエヴァンを振り切るようにして高級宿から出て、ようやっとの体で戻ってきた工房を片付けていたら、時刻は昼を回っていた。
空腹を感じなかったし、もとより食欲はなく。ビーシュは作業台に向かって、サファイアを一心不乱に磨いていた。
傍らには、丸く磨き上げた、雪のように真っ白なミルキークォーツが転がっている。
母性愛の象徴と言われる白い水晶にはくぼみがあり、もうすぐ磨き上がるサファイアをはめ込めば、宝石義眼のできあがりだ。
ポケットに入れてずっと連れ歩いていたサファイアは、研磨してゆくにつれ輝きを増してゆく。
光を閉じ込める、美しい青。
矢車菊の青色と称される最上級のサファイアではなくとも、魅力的な青だ。
ビーシュは手を止めて、ふうっと、息を吐いた。 あまりにも美しくて、名残惜しくなってくる。
いつまでも見つめていたい気持ちを無視して、ビーシュは台からサファイアを外し、特殊な接着剤を使って、台座となるミルキークォーツにサファイアをはめ込む。
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