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口の中でサファイアの義眼を転がし、かるく嘔吐きながら、ビーシュは背中を大きく振るわせた。
「ん、んうっ!」
片手で口を塞いで、びくびくと腰を揺らす。
射精の脱力感に、視界の端がゆがんだ。ビーシュは口を塞いだ掌に宝石義眼を吐き出し、口の中に溜まった唾液を飲み込んだ。
椅子の上で大きく開いた足の間が、ぐっしょりと湿っている。
「何をしていたの、ビーシュ」
「――えっ」
こつ、こつ。
床板に響く靴音に、ビーシュは体をこわばらせる。
「れお、くん?」
「教えて、何をしていたの?」
穏やかな、それでいて否定を許さない強いレオンハルトの声音に、ビーシュは目を泳がせる。
どう、答えれば良いのだろう。
背後で立ち止まるレオンハルトを、ビーシュは振り返られないでいた。
何をしていたかなんて、答えられるはずもない。
「いつから、いたの?」
怖々と訊ねるビーシュに、レオンハルトは答えない。
ビーシュは背を向けたまま、唾液に濡れた宝石義眼をぎゅっと握りしめた。
……見られていたのだろうか。
義眼で達した痴態を、レオンハルトは見ていたのだろうか。
情けなさと恥ずかしさ、そして少しばかりの興奮に胸が締め付けられる。
レオンハルトは何も言わない。
ただ、痛いほどの強い視線を背中に感じる。
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