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「ニルフくんが、昨日……れおくんと一緒にいるところを見ていたんだ。近づくなって、迷惑だって。彼の言うとおりだよ。ぼくと一緒にいちゃいけない」
こつん。
つま先が、椅子の脚を小突く。
逃げようにも逃げる場所はなく、後ろから覆い被さってくるレオンハルトに、ビーシュは頭を振り続ける。
「ごめんね、ビーシュ。ニルフにも、悪いことをしたようだ」
肩を撫でる手が温かくて、すがりそうになる。
振り払わなければならないと思っていても、体はぬくもりをひたすら求め、動けないでいる。
「ビーシュと一緒にいるのがとても楽しくて、いろいろと忘れていたんだ。……エリスにたっぷりと怒られてきたよ」
レオンハルトは「僕の婚約者だったひとだよ」と苦笑を滲ませた。
「結婚はしないよ。解消されてしまったからね」
「どうして、しないの? した、ほうがいいよ。ぼくと一緒にいちゃいけないよ」
肩を撫でる手が、体の線をたどるよう降りてくる。
すっぽりと背後から抱きかかえられ、ビーシュは耳元をくすぐる吐息に身じろいだ。冷えていた体に、再び熱がともり始める。
「ビーシュと一緒にいたいから、しないよ」
首を振ろうとして、顎をしっかりと掴まれる。
「駄目と言わないで、ビーシュ。どうしたら良いか、わからなくなってしまうから」
ちゅく、と触れるだけの口づけ。
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