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ほんの少しのきっかけで、すべての関係が変わる。危うくて魅力的な予感がした。
「ごめんね。言葉にできそうな理由が見つからない。ただ、君が欲しくてたまらない。ビーシュ、君が欲しい」
「で、でもっ」
ビーシュは渾身の力でレオンハルトを突き飛ばし、椅子を蹴飛ばし工房の奥へと逃げた。
レオンハルトと繋いだ左手が、溶けてしまいそうなほどに熱い。脱げかけたズボンを引きずるようにして、ビーシュは片付けたばかりのベッドの前でへたり込み小さく体を丸めた。
来ないで。
左手を抱え込んで震えるビーシュは、ゆっくりと、逃げ道を塞ぐように歩いてきたレオンハルトを見上げた。
「ビーシュ、逃げないで」
レオンハルトの顔が、ゆがんで見えない。眼鏡はちゃんとしているはずなのに。
目をこすれば、指先がしっとりと濡れる。
「泣いても良いから、僕から逃げないで」
「ぼく、泣いているの?」
濡れた両手を呆然と見下ろし、ビーシュは眉根を寄せてレオンハルトを見上げた。
「うん、泣いているよ」
ビーシュの前で膝をついたレオンハルトが両手を広げる。
「おいで」と動く口に、ビーシュは嗚咽を零しながら腕の中に飛び込んでいた。
「れおくんは、ぼくでもいいの?」
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