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「ロナード様以上の、メルビス収集家でいらっしゃるようです」
皮肉めいたサティの返答を、エヴァンは鼻で笑う。
「なるほど。この俺が血眼で探し回っているというのに、惜しげも無くあちこちに売りつけているらしいな。うらやましいものだよ」
空になったグラスに注がれるワインの香りに酔い、エヴァンは誰もいない向かい側に嘆息を零した。
できれば、目の前の席にビーシュを座らせておきたかったが、残念ながら逃げられてしまった。
なにが、彼の気を害したかはエヴァンにはわからなかったが、次に懐に入り込んできたときは、逃がさないようにしっかりと繋いでおかねばなるまい。
ほくそ笑み、口の中の肉をかみ切る。
そこいらの若い男娼よりもずっと良い反応を示す体は、驚くほどにやみつきになる。思い出せば、体の中心がいきりたつようだった。
とはいえ、昨晩まではただの遊びのつもりだった
。帝都での用事が済めば、それで終わりの関係でもなんらかまわなかったのだ。
男だろうと女だろうと、エヴァンにとっての性交はただの暇つぶしだった。金を払うぶんだけ得られる娯楽と同じだ。
「彼が、メルビスに連なる者と知らなければ、こんなにも焦がれることはなかったのだがね」
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