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サティの視線に責められながら、エヴァンはいつも感情に大きく揺らいでいるアメジストの目を思い出す。
金を払って男を買っていたと言うが、悪い男どもに体の良い良いカモにされていたのだろう。
良い思いをして、なおかつまとまった金まで手に入れられる。食い物にされているのにまったく気づけないでいる哀れさは、エヴァンの嗜虐心をじりじりと焦がした。
「彼も、収集するおつもりですか?」
「できれば、そうしたい。まあ、何はともあれ、明日のバロウズ氏との商談の場にはいてもらわねばなるまい。サティ、招待状を出しておいてくれたまえ。直接会いたいものだが、軍病院まで訊ねていくわけにも行くまい。あんな場所で、騒動を起こしてはさすがに立場も危うくなるからな」
ナプキンで口元をぬぐい、ワインには手をつけずにエヴァンは席を立った。
宿とリストランテを繋ぐ渡り廊下を進むエヴァンを見送り、サティは中庭へと出た。
冬空にしてはあたたかな日差しを見上げる姿は、何も知らない者からすれば富豪の妻にしかみえないだろう。
その、彼女にゆっくりと近づいてくる男も、身なりの良いどこぞの若い貴族のようにしか見えなかった。
「聞いていたわね、レスティ」
「ああ、聞いていたよ。サティ。メルビスにご執心の主様も、困ったものだ」
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