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とくに、目玉としているメルビスの宝飾品の取引の足が鈍っているのが問題だった。
帝都にエヴァンが滞在している間に、できるだけ高値で売りさばくつもりが、怪盗の狙いがメルビスの宝飾品であると噂に上ったとたん、売り上げの足は鈍くなった。
一番の買い手であるエヴァンに直接売りつけたほうが、手間も省け実入りもいいのだが、あまりにも大量に品を持って行けばさすがに警戒されるだろう。
どうして、こんなにも多くのメルビス作の宝飾品を持っているのか。収集家であるならば、真っ先に疑問に思うはずだ。
疑われるのは、どうしても避けたい。
怪盗の件は頭の痛いところだが、現時点では、エヴァンのお墨付きをもらっているようなものだ。エヴァンが買い付けたからこそ、ほかの貴族もエーギルが所有する宝飾品を買いたがる。
今、少しでも疑われるような行動は、慎まなければならない。
「いつまで、帝都であれを売る気ですか? もうそろそろ、潮時でしょう?」
商品の入った鞄をもった男が、脂汗を滲ませるエーギルを冷たく光る琥珀の目でにらんだ。とても背の高い男で、ぎらぎらとした好戦的な雰囲気は、実年齢よりも一回りほど若い印象を与えている。
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