四章 甘く包まれる

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 どんくさいが、人なつっこくて……汚したくなるほど綺麗だった。手を出したせいで、娼館の出入りを禁じられ、さよならも言えぬまま流れ流れの人生を送っていた。  金ほしさに贋作づくりに手を出し、後悔しながらもずるずると犯罪に手を染めている今の姿を見たら、なんて言われるだろうか。 「ぼうっと突っ立っていないで、早く来い!」  飛んでくるエーギルの怒声に気のない返事をして、オリヴァーは感傷のすべてを押し隠し歩いて行った。
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