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一緒に飲もうと約束した珈琲豆は自宅に置いたままで、工房に残る豆は必死にかき集めても一人分がせいぜいだった。
散々互いをむさぼった後、精で汚れた体をタオルで拭きあい、ビーシュとレオンハルトは明日、珈琲を飲もうと約束をして別れた。
天井近くの窓を見やれば、もうだいぶ暗くなっていた。
随分と長い時間を、繋がっていたようだ。
体の疲労は激しいが、いつものような焦燥感はないのが不思議だ。
なにげなく交わした約束すら不安にならず、ただ、楽しみに明日が来るのをまっていられるような気がする。
「もういちど、ここでするなんてねぇ。しかも、床で」
工房の奥は、ほぼビーシュの私的な空間になっているとはいえ、職場にかわりはない。
ビーシュは自家製のブレンド珈琲をちびちびと啜りながら、あちこち、軋むように傷む体をさすった。
「……恋、か」
何十年と、縁の無かった言葉だ。
いまさら、恋を問うようになるとは思ってもみなかった。
汚れた床を見るとレオンハルトとの情事を思い出すので、ビーシュは工房へと戻り、作業台へカップを置いた。
長年使い込んだ椅子に座ろうとして、つま先に何かがあたった。サファイアの義眼だ。
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