四章 甘く包まれる

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 ニルフの心境を理解してやれるほど察しの良くないレオンハルトでも、深く失望させてしまったのはわかった。 「ごめんね、僕もエリスも、君の期待にはこたえられそうにない」 「姉さんよりも、あの、眼鏡の冴えない男のほうがいいんですか?」  わずかに滲むニルフの嫌悪感に、誰のことをいているのかと小首をかしげる。 「ビーシュのことかな? ひどいな、あんなに可愛いのに」  きっと、エリスも気に入るだろう。  ――と言うよりも先に、ニルフがいらだたしげに立ち上がった。 「やっぱり、理解できませんよ。レオンさん、あなたはもっと素晴らしい未来があるはずなんだ」  互いの家が了承している以上、婚約破棄は成立している。ニルフが何を言おうと元には戻らないし、レオンハルトもエリスも友人以上の関係を築く気は毛頭無かった。ある意味、落ち着くべき場所に落ち着いたとも言える。 「もっと、素晴らしい未来か。それって、どんな未来なのかい?」 「家の安寧、妻を娶ること、子をなすこと、地位を確立すること、たくさんあるでしょう?」  即答してくるニルフに、レオンハルトはすごいなと返しつつも、頭を振る。  すべて、自分にはなんら興味のわかない物事だった。     
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