四章 甘く包まれる

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 ベッドに乗り上げてくるエヴァンに、ビーシュはじりじりと後ろに下がった。とはいえ、すぐに背中が壁に当たり、逃げ場はなくなる。 「快楽だけが君の救いであるなら、俺のところに来い。誰も、不幸にならない唯一の選択だとはおもわないかね?」  頬に触れようと伸びてくる手に、ビーシュはぎゅっと瞼を閉じて首を振った。  恐ろしくて動かない口の代わりに、唇を噛んで否定する。  たしかに、エヴァンの言うように快楽は逃避のための一つの手段だった。  否定なんてできない、認めざるをえない。  ずっと、刹那的な関係で本当の気持ちをごまかし続けてきたが、もう必要はない。  終わりにできる。  欲しいと望めば与えてくれる人がいることを、ビーシュは知った。  求めることへの恐怖心はいまだ残っているものの、しっぽを巻いて逃げるほどではない。  レオンハルトとの繋がりは、ぼんやりとしていた幸せの輪郭を、ビーシュに教えてくれた気がする。 「……ぼくは、愛がほしい」  頬を撫でる手を振り払い、ビーシュはほろほろとあふれ出る涙をぬぐった。 「彼は……とても暖かかった」 「今だけかもしれないよ。もっと、ずっと良い相手ができれば、離れていってしまうかもしれない」  頬を濡らす涙をぬぐうよう頬を撫でるエヴァンの手に、ビーシュは「やめて」と呻く。     
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