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五章 心と口と行いのなかに
1
温かい食事の匂いに、ビーシュは瞼を持ち上げた。
悪い夢を見ていたのだろうかとぼんやり考えて、鈍い体の痛みに眉をひそめる。
いつの間に、眠っていたのだろう。エヴァンに組み拉かれ、体を思う存分むさぼり尽くされた。
全身が痛いように感じるのは、あちこち噛みつかれたからかもしれない。肌には赤い跡が転々と散らばっていた。
「朝、かな?」
「昼前ってところですかね」
分厚いカーテン越しに届いてくる光は、眩しいほど明るい。
「先生、起き上がれますかい?」
顔だけを声のする方へ向けると、レスティが立っていた。
「……うん、なんとか」
よろめきながら上体を起こすと、レスティがひゅうっと口笛を吹いた。
「さすが、先生。絶倫のロナード様を、満足させることができるだけのことはありますね。途中からサティが部屋を出て行くくらいに激しかったのに、動けるなんて」
すごい、すごいと手放しで持ち上げてくるレスティだが、内容が内容だけに、いまいち嬉しくはない。
扉一枚隔てた向こうで、ずっと聞き耳を立てていたのだろうか。
今までと違った暴力的な性交は、途中から記憶が定かでなくなっていて、どんな痴態を晒したかビーシュにはわからない。
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