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すぱん、と音がしてレスティがつんのめった。足音もなく歩み寄ってきたサティに、平手で殴られたようだ。
「スフォンフィール先生、こちらへ」
体をつかってレスティを押しのけ、道を空けたサティに感謝しながら、ビーシュはシーツをたぐり寄せて体に巻き付けた。さすがに、女性の前で全裸のままは気が引けた。
「あの、ビーシュでいいからね」
ありがとう。とサティに顔を崩してみせれば、つんと整った顔に赤みが差した。
「シャワー室は、ご存じですよね? 服はロナード様が用意した新しいものをお召しください、用意してありますので」
レスティが口を開こうとする都度、肘や蹴りをいれて黙らせるサティに心の底から感謝して、ビーシュは足早にシャワー室へ向かった。
体の奥に残されたままの精を、とにかく早く出してしまいたい。
「……あっ」
道すがら、壁に掛けられた白衣を見つけ、ビーシュは慌ててポケットを探った。
「よかった、あった。傷もない」
サファイアの宝石義眼をぎゅっと握りしめ、ビーシュはシャワー室に飛び込んだ。内鍵はついていないので立てこもれないが、ゆっくりと呼吸はできる。
「れおくん」
握った掌をほどいて、宝石義眼に唇を寄せる。
足を伝って流れる陵辱の残滓が冷たくて、ビーシュはシャワーの蛇口へと手を伸ばした。
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