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軍服を着込んでいるレオンハルトよりもずっと、エリスの凜々しさは軍人らしかった。そう、口に出して言えば、さすがに怒るかもしれないが。
エリスの弟であるニルフは、婚約者たちに遠慮したか、オスカー家の門より少し離れた場所で停車している馬車に残っているちらちらと、視線を感じるようなきになるのは、気のせいだろうか。
「挨拶を、というわけではないけれど、うちで休んでいかなくても大丈夫かい? 馬車にずっと乗っているのは疲れるだろう?」
「心配ご無用よ、これくらいなんともないわ。馬で野原を駆けているほうがずっとおしりが痛いわよ」
「君の心配はしていないよ、ニルフが辛そうな顔をしていたからね」
「まあ、ひどいわね。婚約者でなく、弟の心配?」
つんと、唇をとがらしたエリスは、すぐに大きな口を開けて笑った。
「いいのよ、今回の顔合わせはもともとニルフが言い出したことなのだし。馬車に半日揺られただけで音を上げるなんて、ひ弱すぎるわ」
「半日も、だと思うけどね。まあ、ニルフの矜持もあるだろうから僕はおとなしく帰るとしよう」
小指の爪ほども、浮かれた話題のない二人の会話を馬車で待つニルフが聞いていたら、さぞがっかりするだろう。
昼食をともにしていたときも、話題はもっぱら政治のことばかりで、もっと色恋に浮いた話をするべきだと怒られてしまった。
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