一章 矢車菊の青い瞳は

44/51
前へ
/289ページ
次へ
 エヴァンの目利きは、疑いようがない。価値の低い石を自慢げに出してくる姿はとても想像つかなかったし、わざわざ言い出すくらいだから、とても良い石を持っているのだろう。 「どうするも……たぶん、ぼくには手が届かないでしょう。きっと、美しい石だろうけれど」 「ああ、とても美しいサファイアだよ。一目見れば、きっと君の心を捕らえてしまうだろう」  しきりにポケットを探るビーシュに気づいたエヴァンが、そっと手を差し込んできた。 「見たくはないかい?」耳元をくすぐる声は甘く、あらがえない誘惑に、ビーシュは視線を泳がせ迷うも、ゆっくりと頷いていた。
/289ページ

最初のコメントを投稿しよう!

690人が本棚に入れています
本棚に追加