一章 矢車菊の青い瞳は

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「金なんて、腐るほど持っているからね。どのみち、君が提示できるだろう金額は、私からすればなんの興味も持てないはした金だとおもうよ」  座っていても金が入り込んでくるだろう金鉱脈を所有している富豪が、小銭を稼ごうと思うわけがない。  ビーシュは撫でられるままになって、どうしたものかと頭を悩ませる。 「金以上の価値を、君はすでに持っているよ」  熱のこもった吐息を吐いて、エヴァンの指が落ちくぼんだ鎖骨をするっと撫でた。 「気づいていないのかい? この私が、宝石をだしにして君を寝所に連れ込んだのに?」  今朝の情事の痕が残る首筋。赤く散る淫らな印を一つ一つ、ひっかくようにしてなぞられる。 「……ん、ぁ」  びくん、と足の付け根が、刺激に煽られて突っ張る。 「これだけで、感じてしまうのかい? いけない子だね。性に全然、関心無さそうな顔をしているのに」  無防備に震えるビーシュの体を支え、エヴァンは「おいで」と、背後にある大きなベッドに誘ってくる。  ビーシュは、半ば引きずられるようにしてベッドになだれ込んだ。  素肌を包むシルクは少しひんやりとしていて、火照った体を優しく包んでくれた。  柔らかすぎず、堅すぎず。背中が痛くない寝床は、何年ぶりだろう。  天井から下がるシャンデリアも、窓から差し込む月の光を反射していて綺麗だ。     
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