一章 矢車菊の青い瞳は

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 濡れた唇を蠱惑的にゆがめ、エヴァンはゆっくりと下肢をこすりつけた。にじみ出る先走りが、ビーシュの秘所を濡らしてゆく。 「君は、サファイアが欲しい。私は、帝都の滞在中、我が儘の利く夜の相手が欲しい。利害は一致しているんだよ」  雄々しいエヴァンのペニスに、息が荒くなる。ビーシュは乾いた唇を嘗め……頷き返した。ぼんやりした頭でも、言わんとしているところは理解できた。 「とてもいい、サファイアの原石を仕入れたばかりでね。きっと、気に入るだろう。ついでに、私のことも気に入ってくれると最高なんだけれどね」  ビーシュとしては願ったり叶ったりの提案だが、本当に自分で良いのかと、不安に思ってしまう。  エヴァンの言うサファイアは、腰が抜けるほど高額に違いない。  男娼でもない自分に、それだけの価値があるなんてとてもじゃないが思えなかった。 「石一つで、君を好きにできるんだ。これほど良い買い物も、ほかにはないと思うよ」  エヴァンの愛撫は的確で、快感を引きずり出される心地のよさに、ビーシュは何も考えられなくなってゆく。  一方的な行為のようでいて、エヴァンの仕草や視線には、気遣うような余裕が感じ取れた。 「ほ、ほんとうに……ぼくで、いいんですか?」     
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