一章 矢車菊の青い瞳は

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 高級宿で恋人のようにむつみ合っている、やせぎすでみすぼらしい男はいったい誰なんだろう。釣り合わないにもほどがある。エヴァンは悪魔に騙されているのではないかとさえ、思う。 「ビーシュ、私の名前を呼んで」  くいっと顎ををもたれて向き直り、ビーシュはじっと覗き込んでくる黒曜石の目を見上げ、「エヴァン様」と答えた。エヴァンは「ちがうよ」と首を振る。 「……エヴァン」  褒めるように、額にキスが落ちる。  満足げに微笑むエヴァンに、ビーシュはほっと息をついた。足の間をつつく堅い逸物は、飢えた獣のように先走りを零していた。 「商談成立だ。いいね」  ぐち、っと。エヴァンの先走りにしっとりと濡れた秘所が、湿った鳴き声を上げた。  ビーシュはエヴァンにすがりついたまま、爪を立ててしまわないよう気をつけながら、うなずく。  後悔したところで、いつものことだ。今はもう、下肢の熱にすべてを奪われている。  ほしい。 ビーシュは腰を自らこすりつけ、エヴァンの挿入を促した。 「いけない子だね。酷くしてしまいそうだ」  快感に熱く湿った息を吐き、エヴァンは年齢を感じさせない立派な雄をしならせ、ビーシュの体内をじっくりと進んでいった。
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