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「さぁて、どうでしょうかね。相手は幼少の頃より顔をつきあわせている幼なじみですが、なかなか男勝りの気質を持っておりまして。しおらしい顔が全くもって、想像できません」
「贅沢者めが。あんな美しい女性を娶るのだ、もっと態度に表さなければ失礼だろう。独身者に嫉妬されて、背中から刺されてしまうぞ」
ノリスは朗らかに笑い、自分の荷物を受け取るとさっさと歩いて行ってしまった。生まれたばかりの子供の様子を見に行くのだろうか、後ろ姿でもわかるほど嬉しそうだった。
レオンハルトが従事した遠征は、半年ほど。期間としては、短いほうだ。
国境側で繰り広げられるつばぜりあいの増援という形で参加したが、実際に前線にかり出されるのは下士官ばかりで、レオンハルトのような士官学校からの持ち上がりの、いわゆる貴族軍人は、砦周りの守備をしていた。
戦場である以上、それなりに緊張した雰囲気はあったが、命のやりとりからはほど遠い場所で時間をつぶしている間に、両親が勝手に縁談話を進めていた。
なかなか浮いた話をしないレオンハルトに、両親はいい加減に身を固めてほしいとしびれを切らしたのだろう。
二人いる兄はすでに身を固めていて、子供もたくさんいる。
跡取りの問題はないのだから焦る必要などないが、貴族という手前、それなりに世間体があるのだろう。
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