二章 真実の口

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「謝らなくてもいいよ」  言葉の通り、緩やかな声音のレオンハルトに、ビーシュはほっとして肩の力をわずかに緩めた。  夢中になると、我を忘れがちになる。若い頃も年を取った今でも思い悩んでいる悪癖だった。 「ビーシュ。ビーシュ・スフォンフィールです。軍病院で、装具技師をしています」  軍医で、自分の診察室を持っているビーシュは、少佐のバッジをつけているレオンハルトよりもずっと階級は上で、年齢も一回りほどうえだ。  へりくだって敬語をつける必要など少しもないのだが、気弱な性格がたたって強気に出られないでいた。 「なるほど、どうりで見た覚えのない顔だったんだね。幸いにも、僕の近隣者には義手や義足を必要とする人がいなかったから。ビーシュに会う機会は、いまのいままでなかったんだね」  レオンハルトは「人の顔と名前を覚えるのは得意なほうなんだ」と言って、背中を向けたまま縮こまるビーシュの肩を叩いた。 「教えて、ビーシュ」  そっと、子供をあやすようにささやかれる声。  上官に向かって、失礼なやつだ。そう、つっぱねたって問題ないはずなのに、ビーシュはぶるっと体を震わせ、レオンハルトを振り返った。     
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