一章 矢車菊の青い瞳は

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 年頃の男が独身でふらふらしているのが、どうにも気に入らないようだった。 「だからといって、なにもエリスを相手に選ばなくたっていいだろうに」  エリス・アーカム。両親がレオンハルトの相手に選んだのは、よりにもよって幼少の頃からつるんでいた女性だった。  生涯をともにする相手が幼なじみだなんて、さすがにレオンハルトも苦笑を禁じ得なかった。  性格はおろか、顔すら知らない相手のほうが、まだすんなりと引き受けられたかもしれない 「贅沢者、か。たしかにエリスの見目は良いけれどね。中身の裏返しだよ。まあ、面の皮が厚いのは、僕も一緒だけれど」  エリスもレオンハルトと同じく、容姿も家柄もなんら申し分のないくせに三十を過ぎてもなお独身を貫いている変わり者だ。  もらい手が現れない残りもの同士、くっつけておくのが手っ取り早いとでも思われたのかもしれない。 「僕はともかく、エリスは本当に結婚を決めてしまっていいのかなぁ。一緒に過ごすのは問題ないけれど、彼女と子供を作れるかどうか……小さい頃を知っているだけに、自信がないな」  ふらふらと、のんべだらりと過ごし、気づけば三十二になっていたレオンハルトはともかく、美女で教養のあるエリスが独身を気取っているのは何かしらの理由がありそうだ。     
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