二章 真実の口

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 今も、たいへん嫌そうな表情を見せてくれている。 「商談は、その時になってからゆっくりしよう」 「ええ、ええ。それはもう!」  デニスの強欲さに、実子のニルフもあきれているようだった。 「ニルフ、ぐずぐずしていないで、早くロナード様にティアラをお見せしなさい」 「はい、わかりました」  ニルフはデニスのように感情をすぐには表情に表さず、淡々と己のなすべき仕事に就いている。  エヴァンをちらっと一瞥し、革張りの箱を差し出した。  深いえんじ色の革。年代を感じさせる痛みが、味となって刻まれている。箱は、もっと古い時代の別の作家によるものだろう。  エヴァンは箱を受け取り、蓋を開けた。 「これは、美しい」 「エヴァン様のお眼鏡にかないますかな? なにぶんメルビスの作品は数がすくなく、鑑定眼を養うのも困難。ロナード様がため息をつかれるものであるのなら、間違いなく本物でありましょう。安心いたしました」  大げさな口ぶりだが、安心したとの言葉は本心から出たものだろう。かなりの金額を、このティアラに投資したに違いない。  名の知れぬ宝石商相手に、ずいぶんな博打を仕掛けたものだ。     
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