二章 真実の口

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 手紙のやりとりはしているようだが、帝都にいるのだから、将来の伴侶として、直接会うべきだろう。  遅々として進まないレオンハルトとエリスの関係を、アーカム家で心配して胃を痛めているのは、ニルフだけだった。  父のデニスは結婚後、オスカー家とのつきあいに思いをはせていて肝心の姉はひとごとだ。  もし、破談にでもなれば次はないだろう。相手が幼なじみとは言え、もっと真剣になるべきだとニルフはいらいらと歯がみしていた。  もどかしい。  エリスとレオンハルト。  幼少の頃から二人を見ていたニルフにとって、夢に見るほどの理想の組み合わせだった。  なのに、浮かれているのはどうやら自分一人だけらしいことに気づき、落胆した。 「あわてても、仕方のないことでしょうに。あの、朴念仁のレオンハルトよ。普通の男女のようにことが進むなんて思っていないわ」  ニルフの胸中を見透かしたかのようなエリスに、怒りさえ感じる。 「わかっているならば、行動すべきでは?」 「無駄よ。誰かが何を言ったところで、彼は自分を曲げないでしょうね。誠実だからじゃないわよ、貴方はまんまとだまされているようだけれど、レオンの本性はもっとずっと、ずるいんだから」     
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